甘える

3歳の頃だと思う。
1歳になる位の妹が父に抱かれていた。
着物の懐の中に居る妹が
羨ましかった。
私も父の懐に抱かれたい。
思っても何も言えず、
炬燵の天板に顎をのせて、
黙って見ていた。

あの頃から、父に甘える事は出来なかった。

私の記憶の限り父に甘えた事は一度もない。

頼み事も、相談も一切していない。

自分の思いを伝えた事はない。

亡くなるまで。

私の中で父は他人。