何も言わない

小学高学年の頃からだろうか。
何も言えない。舌が動かない。
から、何も言わない。に変わった。
そして、
懸命にやっても
「何をやらせても!この役立たずが!!」
言われるのなら、何もしない事にした。
母からの呼びかけなどは無視。
何も答えない。何も手伝わない。
聞こえないフリをする。
二階で本を読んでいる私に母が階下から怒鳴る
「何様のつもりだ!?」
「私? 私はお姫ぃ様よ。私の為にお働き!」
心の内で返事していた。

高校進学。
姉の「アンタが普通科に受からないと私が友達に恥をかく」
に反発して、実業高校の商業科へ。
大学に入り、日本文学か日本史を深く学びたかった筈なのに。
高校卒業を前にして
「大学に行きたい」を言えず、
寮に入れる工場勤めを決めた。
当然、面白くなく、半年も持たずに辞めた。

何も要求せず、何も言えず、何も言わず・・・

最初っから、私は自分の人生を歪めていた。